2012/7/14(土)開催
辻野晃一郎さん
アレックス株式会社代表取締役社長(グーグル株式会社 前社長)
1957年福岡県生まれ。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了し、同年ソニーに入社。同社の海外留学制度により渡米し、88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。
VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等のカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。
翌年、グーグルに入社し、その後、グーグル日本法人代表取締役社長に就任、グーグルの日本市場における成長に寄与した。
2010年4月にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長兼CEOを務める。また、2011年7月よりKLab株式会社社外取締役、2012年4月より、早稲田大学商学学術院客員教授。
著書に、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮社、2010年11月20日)。
当選者の皆さん
国内電子機器メーカー勤務
外資系証券会社勤務
コールドウェルバンカーアフリエイツジャパン代表
〜「宇宙目線を持つ」とは?〜
こちらの記事は前編の続きとなっております。下野さん | 以前、講演で「宇宙目線を持て」というお話をされていたんですが、若者で「宇宙目線を持つ」ってどういうことでしょうか。詳しくお聞きしたいなと思っていました。 |
辻野さん | 今、インターネットで地球が小さくなって、全ての発想が地球単位じゃなきゃいけないと思うんだけど、日本人はあんまりそういう発想がないと思っているわけ。元々島国だし、言語圏も日本っていう地域に限られているから、やっぱり内向きなんだよね。だけど今さ、一国の力じゃ解決できないような難問がたくさんある。エネルギー問題、地球温暖化問題、食料問題・・・全部、地球単位で考える必要がある。インターネットがこれだけ広がったから、北アフリカのいろんな政変だとか、経済不況もあっという間に世界に伝搬する。僕がGoogleにいたときにショッキングだったのは、彼らは当たり前のように、最初から宇宙のどっかから地球を眺めているような目線を持っていると感じたことなんだよね。 |
一同 | へぇー、すごい・・・ |
辻野さん | 日本人は日本の中から地球を見るようにしている。でもGoogleの人は宇宙船から、宇宙の彼方で、ぽっかり浮いている地球を見ているんだよね。 |
下野さん | そういう目線に切り替えた方がいいってことですよね? |
辻野さん | 虫の目、鳥の目っていうけど、ある意味、神の目線をGoogleの人たちは持っているんだよね。だから実際、使命感が強い人が多い。Googleの無人走行車の実験をやっているセバスチャン・スランっていうのは、18歳のときに親友が交通事故で亡くなったっていうのが原体験になって、この地球上から悲惨な交通事故をなくそう!という強い使命感でやっている。それでGoogleに入って、今までうまくいかなかった車の自動走行のプロジェクトをやって、ついに22万キロ走行させて、ネバダ州からは公道を走る許可も下りた。行政の対応の速さも凄い。 |
一同 | うーん、すごい! |
辻野さん | 僕はそういうのって、宇宙目線というか、志がものすごく高いからできると思うんだよね。要するにビジネスのためにプロジェクトをやっているわけではなくて、強い使命感で動いている。(ソニーの)盛田さんもそうだった。そういう世界観というかスケールの大きさがあった。だから最近、外で講演するときは最初の掴みに、Google Earthで遠くに地球が浮いている画を持って来て、その講演している場所を上空からズームアップする画像を流して、宇宙目線は大事ですよという話からしています(笑)。 |
〜変化を起こすということ〜
下野さん | 辻野さんはソニーの中で、いろんな商品を手がけていてリスクをとってチャレンジしてきた印象が強いのですが、その中で周りとのバランスをとることが難しかった経験はありますか? |
辻野さん | 新しいことをやるんだからさ、現状維持をしたい人にとってはたまんないですよね。会社っていうのは現状維持派と改革派がいて、そのせめぎ合いだから。僕はいつも変える方にいたんだけどね。現状維持派の方がマジョリティになると、会社は滅んでいくんです。 |
一同 | うーん・・・ |
下野さん | 辻野さんは昔から、変化を起こしたいと思う性格だったのですか?それとも何かがきっかけで考え方が変わったのですか? |
辻野さん | 自分はそもそものソニースピリッツに深く共鳴していたというか、元々、ソニースピリッツが自分の生き方に合うと思ってソニーに入りました。ソニーに入ってさらに変革を好むスピリッツが強まりましたね。普通の日系のコンサバティブな会社に行っていたら、とっくのとうにはじき出されていましたよ(笑) |
一同 | (笑) |
辻野さん | ソニーだからこそ、20年もいれたんだと思う。良い会社でしたよ。でも、山田さんも自分で起業しているから分かると思うけど、自分のやりたいことを自分のアジェンダでやっているのが一番健康にいいよね(笑)。 |
山田さん | はい、そうですね! |
辻野さん | もちろん、ストレスはあるけどね。全て自分の肩にのしかかるから。でも、それは健全なストレス。 |
辻野さん | ストレスって人を成長させるストレスと、人をだめにしていくストレスがあるから、それ気をつけた方がいいよ。人をだめにしていくストレスは我慢してもしょうがないから、足の引っ張り合いみたいなストレスからは早く抜け出ることが必要だよね。 |
〜若い人へのメッセージ〜
青柳さん | 辻野さんは、今後の日本の経済をどのようにお考えですか? |
辻野さん | アメリカがやったみたいに、新しい経済モデルをつくるってことから逃げないで、正面からチャレンジしないといけないと思っている。20世紀の成功パターンをもう一回取り戻そうとするんじゃなくて、辛くても、21世紀の新しい成功パターンをスクラッチから作り上げるようなことにチャレンジしていくことが重要だと思います。 |
青柳さん | 日本は、アメリカがやったことを学んで改善していくスタイルをずっとやってきたと思うんですね。それって結局、新しいものを生み出せていない気がして。今のお話からすると、そこにチャレンジしていかないと、スピード感的にも、企業が存在していけないということですか?従来のスタイルを貫くのは、インターネットが到来してから厳しくなったというか。 |
辻野さん | アメリカはインターネットの世界で、先頭走っていて、日本もその世界で頑張らないといけないのはあるけど、どの領域でもいいじゃないですか。例えば山中先生のIPS細胞というのは、日本から生まれた、世界の人類を救う研究じゃないですか。例えばああいうものを、人材を含めて海外にどんどん持って行かれるのではなくて、日本の中できちんと育てて行くことに投資したり、政府がもっと援助したり。日本は、研究費に関して、長い目で見ると、圧倒的に不足しているんですよ。エネルギーの話でも、今回、あれだけの大問題が起きたんだから、本来ならば、20年後30年後を見据えて、新しいエネルギー政策の指針を直ちに打ち出さなければならなかったよね。逆に言えば、これは原子力に変わる新しいエネルギー産業を起こす意味で、チャンスなんだから。きっかけは色々あるんだから、あとは一人一人が立ち上げるってことなんじゃないんですか。 |
青柳さん | なるほど。 |
辻野さん | 若い人はやっぱりどこかブランド志向で、就職活動一つとってみても、「シューカツ」とか言って、20世紀にできた有名企業に必死に入ろうとしているよね。企業ってのは、創業期、成長期、安定期、衰退期があって今有名な企業は、もう安定期か衰退期かもしれない。創業期や成長期にいる企業って誰も知らないんです。でも、そういう企業こそ5年後10年後に大きく成長しているかもしれない。だからそっちに行く人はハイリスク&ハイリターン派だよね。でも、日本人のマジョリティはローリスク&ローリターン。 |
下野さん | どうやったら、日本の若い人たちが、山田さんみたいにハイリスク&ハイリターンをとれるようになりますか? |
辻野さん | 結局ね、自分の頭で考えて自分で行動することにつきると思うよ。国を頼っても、国にどうこう言っても何か変わるわけではないからね。大企業や国に頼ってなんとかなっていた時代って、もうとっくに終わってますよ。僕は若い人たちにはよく、「脱藩のススメ」ということを言っています。昔、坂本龍馬の時代は、志ある人たちが将来の日本をつくるために命がけで脱藩したわけでしょ。いま別に会社辞めたって命まで取られるわけではないんだし。もっともっと自由に羽ばたけばいいと思うんだけど、同時に羽ばたけるだけの受け皿も作ってあげないといけないよね。 受け皿といえば、例えば、今僕のところでは新しい事業として『COUNTDOWN』っていうクラウドファンディングのサービスを始めるんだけど、これからは、どこかの大きな組織に属していなくても、小さなグループでも個人でもインターネットにつながっていれば大勢の不特定多数の力を借りることができる時代だと思います。だからこういうものも飛び出す勇気につながってチャレンジする人が増える一助になればいいと思ってます。残念ながら、日本で Best and Brightest の人たちってやはり大企業に入るわけじゃないですか。そうするとそういう人たちって20世紀にスタイルを確立した人たちによって潰される場合があるんですよ。リスクをとらないで組織で偉くなってきたような人たちから見ると、チャレンジする人は危なっかしく見えるから、チャレンジしないように封じ込めていくので、若いときに考えていたアイデアとかエネルギーがだんだん萎えていっちゃうんですよね。一方、アメリカでは Best and Brightest は自分で起業するから、企業に就職しない。だから、自分の考えを直接マーケットにぶつけることができるから、誰のフィルターもかからない。判断するのはお客さん。組織に頼らない生き方もあっていいと思います。 |
〜プレミアムランチを終えて〜
辻野さん | 今回は、ソーシャルランチの2人の挑戦を応援したいと思って参加をしました。Google出身で日本から若い人がこうして起業するのは、やはり嬉しいし心強いね。ソニーは戦後、焼け野原のときに起業して、日本を支えた。それに比べると、今は本当に恵まれた時代なんだよね。そういう時代に生まれ合わせて、メリットを最大限に活かせば、なんだってできる。20世紀的思考を断ち切る人が数としてもっと増えてくれば、真似する人が出て来て、世の中全体にもっと活気が溢れると思っています。 |
青柳さん | 今回応募したのは、投資銀行で日本の家電業界を担当していたので、その出身の方が現状をどう見られているのか、また辻野さんは問題意識を持って辞められたと思うのでその辺りを伺いたかったのが一番大きな動機でした。一番今回のお話の中で面白かったのは、年とっても関係ないっていうことですね。自分が年をとったときに、新しいことを年だからやめようというのはもったいない!と思いました。 |
下野さん | きっかけは辻野さんの本を読んでいて、一度お話してみたいと思っていました。辻野さんのお話の中で印象的だったのは、スピード感を持て!というお話です。また、辻野さん自身が若い世代に向けたメッセージを持っている方なので、こうした形で伝わったのが良かったと思いました。 |
山田さん | 僕もアメリカに本社がある会社の日本法人の代表をやっているので、辻野さんのお話を是非聞いてみたいと思っていました。この場だけの関係で終わるのではなく、今後もつながっていける場になったのが今日一番の収穫です。 |
PREMIUM LUNCHとは?
- コンセプト
- ランチを通じた、思いと経験の分かち合い
- 企画内容
- 毎回1名のゲストが登場し、応募者の中から選ばれた当選者3名と合わせて、4名で行うランチ会を開催します。
- 開催日時
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日程: 2012年6月6日から7月14日までの毎週土曜日
時間: 13:00-14:30 - 応募締め切り
- 各回開催日前週の木曜日
- 当選者発表日
- 応募締め切り日の翌日
- 共催
- SHARED TERRACE GAIEN ICHONAMIKI (アイビー株式会社)
PREMIUM LUNCH開催場所
『シェアードテラス』は、4月20日に青山の神宮外苑いちょう並木にオープンした、アフタヌーンティーが提案する新しいコンセプトのお店です。
コンセプトは「Living is Sharing 生きるとは、分かち合うこと」
分かち合えば喜びが倍になったり、悲しみが半分になる。そんな「分かち合うこと」をコンセプトにしたカフェです。
- 住所
- 〒107-0061 東京都港区北青山2-1-15
- アクセス
- 「外苑前」駅 4番出口 徒歩6分、「青山一丁目」駅 1番出口 徒歩6分
- 公式facebookページ
- https://www.facebook.com/sharedterrace
補足
- PREMIUM LUNCH への応募は1人で行います。
- 複数の回に応募可能です。
- 昼食代はPREMIUM LUNCH運営事務局が負担致します。
- 当選したが参加が出来なくなった場合は、メールにてご連絡頂ければ別の方に権利を移動致します。
お問い合わせ
PREMIUM LUNCH運営事務局
メールアドレス: support@social-lunch.jp
本キャンペーンに関して、上記運営事務局メールアドレスのみでのご対応とさせて頂きます。
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